ホモ・サピエンスの涙
About Endlessness
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スウェーデン・ドイツ・ノルウェー合作
ロイ・アンダーソン
マッティン・サーネル、タティアーナ・デローナイ、アンデシュ・ヘルストルム、ヤーン・エイェ・ファルリング
オフィシャルサイト
Studio 24


ホモ・サピエンスの涙

映像の魔術師が、この時代を生きる全人類(ホモサピエンス)に贈るー愛と希望を込めた、万華鏡のような映像詩。

前作『さよなら、人類』でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞(グランプリ)に輝き、さらに5年ぶりに発表した本作でも同映画祭で最優秀監督賞受賞という快挙を果たしたスウェーデンの巨匠ロイ・アンダーソン。CG全盛の時代にCGはほぼ使わず、野外撮影ではなく巨大なスタジオにセットを組み、模型や手描きのマットペイント(背景画)を多用するというアナログにこだわった手法で驚きの傑作を生みだしてきた。絵画のような映像美と、独特のユーモアが散りばめられた哲学的な世界観が絶賛され、これまで『散歩する惑星』(00)、『愛おしき隣人』(07)、『さよなら、人類』(14)と世界中の映画祭で受賞を重ねてきた。『ミッドサマー』アリ・アスター、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』アレハンドロ・G・イニャリトゥ、『ブラック・スワン』ダーレン・アロノフスキーなど、名だたる映画監督たちも敬愛する監督にロイの名を挙げ、映画ファンのみならず名匠たちをも熱狂させている。



“映像の魔術師”ロイ・アンダーソン監督が本作で描くのは、時代も年齢も異なる人々が織りなす悲喜劇。構図・色彩・美術と細部まで計算し尽くし、全33シーンすべてをワンシーンワンカットで撮影した。実在の名画の数々からインスパイアされた美術品のような贅沢な映像にのせて「千夜一夜物語」(アラビアンナイト)の語り手を彷彿とさせるナレーションが物語へと誘う。さらに、ビリー・ホリデイ、ザ・デルタ・リズム・ボーイズなど時代を超えて愛される歌声も登場。映画に彩りを与え、ロマンティックな雰囲気を纏わせる。

この世に絶望し、信じるものを失った牧師。戦禍に見舞われた街を上空から眺めるカップル…悲しみは永遠のように感じられるが、長くは続かない。これから愛に出会う青年。陽気な音楽にあわせて踊るティーンエイジャー…幸せはほんの一瞬でも、永遠に心に残り続ける―。人類には愛がある、希望がある。だから、悲劇に負けずに生きていける。悲しみと喜びを繰り返してきた不器用で愛おしい人類の姿を万華鏡のように映したアンダーソン監督渾身の傑作が、遂に日本に上陸する!



監督からのメッセージ

私の映画のメインテーマは、人間の脆(もろ)さです。脆さを見せる何かを創作することは、希望のある行為だと思っています。なぜなら、存在の脆さに自覚的でいれば、自分の持つものに対して丁寧でいられるからです。私は、常に存在の美しさ、生の美しさを強調したいと思っています。しかし、そのためにはコントラストが必要で悪い一面や残酷な一面も見せなければなりません。例えば、美術の歴史を見ると多くの絵画は非常に悲劇的です。しかし、それらを描いた芸術家たちは、残虐で悲しい風景を描くことでエネルギーを変換し、希望を生み出してきたのです。

私は、永遠であることに限りなく近いシーンを作りたいと思っています。9月だったり、雪が降っていたり…歴史的なシーンがあったとしても、永遠性の感覚を残したかった。私は絵画──私たちが生きる時代に私たちに語りかけ、200年前、或いはもっと前の時代の人々にも語りかけていた芸術から、大きな影響を受けています。それらは、私たち人間は年齢や時代を超えて皆似ている存在なのだということを教えてくれます。タイトルにある“oändliga(無限)”は、人間の存在についての“果てしなさ”を示しているのです。