わたしの叔父さん
Onkel
G
デンマーク
フラレ・ピーダセン
イェデ・スナゴー 、ペーダ・ハンセン・テューセン、オーレ・キャスパセン、トゥーエ・フリスク・ピーダセン
オフィシャルサイト
2019 88miles


わたしの叔父さん

世界に名を馳せた日本の監督の一人、小津安二郎の海外での評価はとても高く、ジム・ジャームッシュやヴィム・ベンダース、若い監督でいうとコゴナダ監督。昨年当館でも上映した『コロンバス』はオマージュ作品として小津安二郎監督へ捧げられ、数々の映画祭で絶賛されました。そして、本作『わたしの叔父さん』のフラレ・ピーダセン監督も小津を師として仰いでいるそうです。



独特のローアングル、BGMがほとんどなく、セリフよりもその場の空気感を漂わせる長い間、そういった小津作品の特徴が本作品でも見られます。冒頭からのシーンもセリフが語られるまで結構長く、最初になんというのだろうと思ったら・・・、というちょっとした驚きは、最後のセリフにも通じていて、そういうところに本作品の計画された繊細さを見ることができます。



田舎にある農家の家族の淡々とした日常の中、たまに起こる非日常的なできごとは喜びと困惑を同時に与え、主人公を戸惑わせます。主人公のクリスは変化を望んでいるのかいないのか、というよりもクリスが一番大切にしているもの。それが本作品なんだろうな、と思いました。

田舎の生活のリアル感は、この家が本当に農夫である「叔父さん」の家で、クリスとクリスのおじさんは、本当に姪と叔父さんなのだそう。だから醸し出されるあの空気感と納得すると同時に、演技未体験の叔父さんと姪の自然な空気感をよく映し出したなぁと感心しました。淡々と静かな作品ですが、無駄を削り落としたミニマルな中で際立つ美しさがぎゅっと詰め込まれていて、東京国際映画祭グランプリ受賞が納得の作品です。