花と雨
PG12
日本
監督:土屋貴史
笠松将、大西礼芳、岡本智礼、中村織央
オフィシャルサイト
2019「花と雨」製作委員会

花と雨

伝説のアルバムからインスパイアされた儚くも、激しく美しいリアルユースムービー。

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幼少期をロンドンで過ごした吉田は閉塞的な日本の空気に馴染めないまま、高校生活を送っていた。次第に学校から距離を置く吉田にとって唯一HIP HOPだけが彼の拠り所だった。海外での活躍を目指す姉・麻里との約束を胸に、アーティストとして独り立ちするべく練習や活動に没頭する。しかし初めて自分の居場所を見つけたと思った矢先、チャンスを掴みかけては裏切られ、現実の厳しさに晒され次第に自分を見失っていく。そして追い打ちをかけるように、ある悲劇が訪れる。このままでは、俺は負ける。吉田はラッパーとして、1人の人間として、現実を乗り越えるべく立ち上がる…。

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原案 / 音楽プロデュース:SEEDA

東京都出身。幼少期をロンドンで過ごす。バイリンガルスタイルのキレのあるラップでストリートの詩情を切り取り、早逝した姉への思いを歌ったアルバムのタイトル曲などを収録した記念碑的作品『花と雨』(2006)をはじめとして、これまで数多くのクラシックを生み出した。2009年12月にリリースしたシングル「WISDOM」はオリコンデイリーチャートにて最高5位を記録、ウィークリーチャートでも8位と初のオリコン一桁台のランクイン。2010年8月アルバム『BREATHE』をリリース。i-Tunes総合チャート最高2位、オリコンインディーズチャート2位を記録した。SEEDAが生み出したフローとリリックは、それまでの日本のラップゲームを一変するものだといわれる。他に日本のヒップホップのイノベーターとして、主に時の若手の楽曲を集めたMIX CD『CONCRETE GREEN』シリーズ(2006~)をDJ ISSOと制作、また現在では毎日更新のYouTube番組ニートtokyo(2017~)を主宰するなど、楽曲以外のクリエイションの評価も高い。

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今や世界のポップカルチャーの中心的価値観となり、日本でも新世代ラッパーたちの台頭やMCバトル番組の人気などで独自の盛り上がりを見せているラップ・ミュージック(≒ヒップホップ)。『花と雨』が描いているのは、そんなラップ・ミュージックというアートフォームの根底にある若者の自己承認欲求、息苦しい社会への怒り、地続きの場所にあるアウトローの世界といった、これまでの日本の映画やドラマが真っ正面から捉えることができなかった現代の若者のリアルな肖像だ。

学校でも社会でも自分の本当の居場所が見つけられなかった一人の青年が、ヒップホップのカルチャーと出会ったことがきっかけで人生の目的を見つけて、MCバトルの世界で、ストリートで、自分が何者であるかを証明していく。そんなストーリーの精神的支柱となっているのは、ラッパーのSEEDAが自身のライフストーリーを刻んだ、映画と同名の傑作アルバム『花と雨』だ。リリースから約14年の年月を経て、そこに「映画」として新たな魂を吹き込んだ本作の試みは、単純な伝記映画や安易なサクセスストーリーには収まらず、まさにヒップホップのエッセンスを抽出することに成功している。